近くのショッピングセンターにタワーレコードがあり、たまに覗くのだが、正月に行ったら残念なことに閉店の知らせが出ており、輸入盤2割引のセールとなっていた。それで記念に、たまたま見つけたリサ・バティアシュヴィリの新譜の輸入盤、ブラームスのヴァイオリンコンチェルトを収めた一枚を買った。クリスティアン・ティーレマン指揮、ドレスデン・シュターツカペレ。グラモフォン。クララ・シューマンの「三つのロマンス」(ピアノはアリス・サラ・オット)も合わせて収められている。
バティアシュヴィリは一昨年の12月、来日してN響とブラームスのこのコンチェルトを演奏している。シャルル・デュトワの指揮。テレビで聴いた。そのすぐあとフィンランド放送交響楽団&指揮サカリ・オラモともやったようで、これもNHKFMで放送されたのを聴くことができた(有難ヤ)。録音しておいたものを聴き比べると、フィンランドでの演奏の方がややよろしいような印象だ。そのフィンランド・ヴァージョンと昨年夏に録音された今回のCDの演奏とを比べると、今回のものの方がさらによい。ヴァイオリンのすぐれた発話力が耳を魅了する。無表情に弾き流す部分、泳ぐように曖昧になる部分がまったくなく、どの部位もしっかりした音の立ち方になっている。弾きこむほどに、演奏の理解度、設計の精度が高まっていったのだろうと想像される。ティーレマンのめりはりのきいた構築も力感にみち説得力がある(洪水11号特集のインタビューのとき諸井さんと福中さんがこの指揮者のことを話題にしていたのを思い出す)。
この曲の第三楽章は勢いよく行くだけと思っていたが、今回聴いて、主題の、四拍子の四拍目付近の三つの細かい音符が面白いことに気づいた。つまりこれらの音が非常に強く響くため、普通ならアクセントが来ないはずの四拍目にアクセントがあるかのように聞こえ、規則性を崩すようなユニークで放埒なリズム感覚が生じて、なかなか楽しい。ブラームスの不敵なリズムワークを聴け。
ちなみに記されている注によると、前作のCD「ECHOES OF TIME」(ショスタコーヴィチのヴァイオリンコンチェルト1番など)ではVenus Stradivariusという楽器で弾いたが、今回はex Joachim Stradivariusという楽器だそうだ。その辺もこの道の玄人は耳を澄ませたくなるところだろう。
このCDはまだAmazonでは発売されていないようだ。もう数日お待ちください。
(池田康)
2013年01月05日
バティアシュヴィリのブラームス
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