2013年07月01日

米山浩平詩集『ピノキオ』

詩行の切れと跳躍に独自のものがあり、この詩人はどういった過去の詩作品を読んで、このような詩を書くようになったのだろうかと考えさせられる。しかも、ことによったら「わけがわからない」とも言われかねないイメージの散乱が印象づけられる収録された詩群だが、本の背には「物語詩」とあって、え?!、となるのだ。「脱出」より引用する:

 貝殻の内部で叫ぶ少年
 宇宙を模していながら
 巻貝の螺旋状の波でさえ
 わたしたちにとどくことはありえない

 側頭葉に銃口をあてられた土木作業員が
 容易には愛されぬ風船に針をむける
 少年が発狂して間もなく
 孤立した貝殻のような小宇宙の炸裂が続いた
 そのたびに作業員の吹かす
 煙草のけむりが前方を遮ってしまうから
 爆発の間隙を通りすぎる少年の姿を
 わたしは何度も見逃した

土曜美術社出版販売刊。
(池田康)
posted by 洪水HQ at 10:21| Comment(0) | 日記
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