詩行の切れと跳躍に独自のものがあり、この詩人はどういった過去の詩作品を読んで、このような詩を書くようになったのだろうかと考えさせられる。しかも、ことによったら「わけがわからない」とも言われかねないイメージの散乱が印象づけられる収録された詩群だが、本の背には「物語詩」とあって、え?!、となるのだ。「脱出」より引用する:
貝殻の内部で叫ぶ少年
宇宙を模していながら
巻貝の螺旋状の波でさえ
わたしたちにとどくことはありえない
側頭葉に銃口をあてられた土木作業員が
容易には愛されぬ風船に針をむける
少年が発狂して間もなく
孤立した貝殻のような小宇宙の炸裂が続いた
そのたびに作業員の吹かす
煙草のけむりが前方を遮ってしまうから
爆発の間隙を通りすぎる少年の姿を
わたしは何度も見逃した
土曜美術社出版販売刊。
(池田康)
2013年07月01日
米山浩平詩集『ピノキオ』
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