2014年04月29日

嶋岡晨詩集『洪水』

sishu-kozui.jpg嶋岡晨さんの新しい詩集『洪水』が完成した。『終点オクシモロン』『魂柱・反世界遺構』と一年ごとに刊行してきた、小社三冊目の詩集で、奇しくも雑誌「洪水」と同じ書名となった。この「奇しくも」は「偶然」ではありえないから、嶋岡さんの測り難いご深慮によってこのタイトルにして下さったのだろう。前二作と同様、執筆の勢いは圧倒的で、分量は更に多くなっている。ページ数がさほど変らないのは、組み方を工夫しているためだ。
今回の詩集の一つの特徴として、午年だからだろうか、馬にまつわる詩がたくさん入っている。一例を挙げると、「走る馬」という詩の後半:

 自分に鞭をあてつづけ
 腹を拍車で蹴りつづける
 瀕死の愛の使者の手紙を 裏切り者に
 手わたすため

 永遠の夢 わたしの唯一の生に
 合体させるため 走りつづけ
 たてがみは抜け落ち
 幻の鞍とともに わたし自身落馬する
 一瞬まで
 宙を飛ぶ つばさある馬でなく
 泥と埃にまみれた落伍者
 誇り高い偽物として 轡を咬み

 わたしはいななき 泡を噴き
 走りつづけねばならない
 走りつづけねば
 走り……

表題作の「洪水」は「かぎりない人生の幻を呑みこみ/ぬるぬる膨張しつづける/おろかなおろち」と始まり、「いのちの血しぶき 断崖に落ちる/いまわしい呪文の大合唱を/泥水のどんどろどろの大太鼓を」と終わる。最後から一つ前の詩篇「点火」は陰鬱さを吹き飛ばすように、次の六行で締めくくられる:

 オリンピックの点火台より
  はるかに高い場所に
 人間は駆けのぼらねばならない
   神話の英雄たちより美しく
 心臓を破裂させる 宇宙大の
    花火を打ちあげねばならない

表紙カバーの巨大で怪物のようなカエルにも注目してほしい。本体2200円+税。紀伊國屋書店新宿本店、ジュンク堂池袋店などに出る予定。連休後半ぐらいになるだろうか。
(池田康)
posted by 洪水HQ at 09:36| Comment(0) | 日記
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