シェークスピアのソネットは154篇あり、それを7年かけて訳出・推敲したという。粘り強い努力の結晶であり、英語原文も収録しているから、我々読者は和訳と原文を比べながら読み進むことで実り豊かな読書体験を得ることができる。
シェークスピアのソネットは見慣れない形であり、連に分かれておらず14行がつなげて並べられ、最後の2行(カプレット)を全体のまとめとして少し行頭を下げて組んでいる。
南原さんによれば、シェークスピアのソネットは
@ 若い男性(美男子)に子作りを勧める詩(1〜17)
A 美男子に対する作者の愛を歌った詩(18〜126)
B 若い女性への愛の詩(127〜152)(ダークレディ詩篇と呼ばれる)
C 寓話的なキューピッドの詩(153〜154)
の4つに大きく分かれるとのことだ。
恋人を夏の日に比べて称賛する18番は有名。最も多く見られるのは、恋人に対して裏切られたと恨み言を言ったり、自分が裏切った謝罪の言葉を連ねたりという生々しい睦言の延長のような内容なのだが、シェークスピアの措辞の巧みさで読み甲斐のあるものとなっている。人間を死へと送り届ける「時の大鎌」の虚無的なイメージも頻出するが、対抗するように、恋人の魅力を詩にすることで愛の永遠の記念碑を建てるというポジティブな考えも顕著だ。
下にソネット43番を引用紹介する。
わたしが眠っているときわたしの目は最もよく見える
なぜなら昼間はずっとさほど注目されない物ばかりを見るからだ
だがわたしが眠るとき夢の中でそれらはあなたを見る
そして闇の中で輝き闇を明るく照らす、
そしてあなたの影は周りの影たちを明るく照らす
あなたの影は眠れる目の中でかくも明るく輝くが
あなたの実体は 晴れた昼に それにもまして明るいあなたの光によって
どんなにか幸福な様子を示すだろう、
深夜にあなたの美しく不完全な影は
深い眠りの中で眠れる目にとどまるが
日の光の中であなたを見ることによって
わたしの目はまあどんなにか祝福されるだろう、
わたしがあなたを見るまではあらゆる昼は夜のように見え
そして夢があなたをわたしに示すとき夜は明るい昼のように見える。
Sonnet XLIII
When most I wink, then do mine eyes best see,
For all the day they view things unrespected;
But when I sleep, in dreams they look on thee,
And darkly bright, are bright in dark directed.
Then thou, whose shadow shadows doth make bright,
How would thy shadow’s form form happy show
To the clear day with thy much clearer light,
When to unseeing eyes thy shade shines so!
How would, I say, mine eyes be blessed made
By looking on thee in the living day,
When in dead night thy fair imperfect shade
Through heavy sleep on sightless eyes doth stay!
All days are nights to see till I see thee,
And nights bright days when dreams do show thee me.
(池田康)

みらいらん15号が完成した。164ページ。

谷口ちかえさんの新著『世界の裏窓から ――カリブ篇』が洪水企画の〈詩人の遠征 extra trek〉シリーズの第2巻として刊行となった。A5判、272ページ、定価2420円(本体2200円+税)。
「ぱにあ」所属の杉中雅子さんの第三歌集『ザ★家族III「メッセージ」』が出来上がった。A5判並製カバー帯つき。144ページ。税込1980円。2017年以降の作品312首を収める。
泉遥さんの第二歌集『風の唄』が完成した(「そして それから」はサブタイトル)。3年前の第一歌集『風の音』以降の作品を収める。四六判128ページ。大病を抱えながら生きてきて、今年86歳、その感慨が歌集の中心を流れる思いだ。親しみやすいうたいぶりで、構えることなく流れるように読んでいくうちに長野県飯田市に住むこの歌人の生活がありありと目に見えてくる感じがする。帯に載せた5首: